ファクタリング利用後の会計処理はどうする?仕訳方法を具体例で解説

こんにちは。
元銀行員の資金繰りコンサルタント、湊です。

急な資金需要に対応するため、ファクタリングを利用して売掛金を早期に現金化された経営者の方から、最近こんなご相談をよく受けます。

「無事に資金調達できたのは良いけれど、この後の経理処理はどうすればいいんだろう?」
「勘定科目は何を使えばいいのか、仕訳のやり方が全く分からない…」

確かに、ファクタリングは銀行融資とは異なる資金調達方法のため、その会計処理に戸惑うのは当然のことです。
しかし、ご安心ください。
ファクタリングの会計処理は、いくつかのポイントさえ押さえれば、決して難しいものではありません。

この記事では、メガバンクで多くの中小企業の財務を見てきた私が、ファクタリング利用後の会計処理と仕訳方法について、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたの会計処理に関する不安は解消されているはずです。

ファクタリング会計処理の基本|押さえるべき3つの勘定科目

まず、ファクタリングの仕訳を理解するために、基本となる3つの「勘定科目」を押さえましょう。
勘定科目とは、お金の動きを帳簿に記録する際の「見出し」のようなものです。

① 売掛金:すべての取引の起点

これはお馴染みの勘定科目ですね。
商品やサービスを提供し、後日代金を受け取る権利、つまり「売掛債権」を管理するための科目です。
ファクタリングは、この「売掛金」を譲渡(売却)することから始まります。

② 売上債権譲渡損:ファクタリング手数料の処理

ファクタリングを利用する際に発生する手数料は、会計上「売上債権譲渡損」という営業外費用の勘定科目で処理するのが一般的です。

「売掛金という債権を、額面より安い価格で売却したために生じた損失」と考えるとイメージしやすいでしょう。
会計ソフトによってはこの科目が無い場合もあり、その際は「支払手数料」や「雑損失」で代用することも可能です。

③ 未収入金:契約から入金までの「仮の姿」

ファクタリング会社と契約してから、実際に代金が振り込まれるまでには、通常少し時間がかかります。
この「譲渡は決まったけれど、まだ入金されていない売掛金」を管理するために使うのが「未収入金」です。

「売掛金」が「未収入金」という別の資産に姿を変えた、と考えると分かりやすいかもしれません。

【具体例】2社間ファクタリングの仕訳方法を5ステップで解説

では、最も利用されることの多い「2社間ファクタリング」を例に、具体的な仕訳の流れを見ていきましょう。
ステップごとに追いかけていけば、全体の流れがスムーズに理解できます。

モデルケース:100万円の売掛金を、手数料10万円でファクタリング

  • 売掛先A社に対する売掛金: 100万円
  • ファクタリング会社との契約: 2社間ファクタリング
  • 手数料: 10万円(10%)
  • 受取額: 90万円

ステップ1:売掛金の発生

まず、取引先に商品やサービスを提供し、売上が立った時点の仕訳です。これは通常の取引と全く同じです。

借方貸方
売掛金 1,000,000円売上 1,000,000円

ステップ2:ファクタリング契約の締結

次に、ファクタリング会社と契約し、売掛金を譲渡した時点です。
この段階ではまだ入金がないため、「売掛金」を「未収入金」に振り替えます。

借方貸方
未収入金 1,000,000円売掛金 1,000,000円

この仕訳によって、帳簿上「A社への売掛金」は消え、「ファクタリング会社から入金される権利(未収入金)」に変わったことになります。

ステップ3:ファクタリング会社からの入金

契約後、ファクタリング会社から手数料が差し引かれた金額が入金されます。
ここで、手数料を「売上債権譲渡損」として計上します。

借方貸方
普通預金 900,000円未収入金 1,000,000円
売上債権譲渡損 100,000円

これで、ステップ2で計上した「未収入金」が消え、手元の普通預金が90万円増え、費用として10万円が計上されたことになります。

ステップ4:売掛先からの入金

2社間ファクタリングの場合、売掛先からは通常通りあなたの会社の口座に売掛金が入金されます。
この入金された100万円は、ファクタリング会社に送金するための一時的な「預かり金」です。

借方貸方
普通預金 1,000,000円未払金 1,000,000円

※ここでは「未払金」を使いましたが、「預り金」で処理する場合もあります。 重要なのは、この入金が自社の売上ではないことを明確に区別することです。

ステップ5:ファクタリング会社への送金

最後に、売掛先から入金された100万円をファクタリング会社へ送金します。
これで一連の取引は完了です。

借方貸方
未払金 1,000,000円普通預金 1,000,000円

ステップ4で計上した「未払金」が消え、預かっていたお金を送金したことで、預金の残高も元に戻ります。

【具体例】3社間ファクタリングの仕訳方法|2社間との違いは?

次に、手数料が安い傾向にある「3社間ファクタリング」の仕訳を見ていきましょう。
基本的な考え方は2社間と同じですが、プロセスがよりシンプルになるのが特徴です。

モデルケース:100万円の売掛金を、手数料3万円でファクタリング

  • 売掛先A社に対する売掛金: 100万円
  • ファクタリング会社との契約: 3社間ファクタリング(売掛先の承諾あり)
  • 手数料: 3万円(3%)
  • 受取額: 97万円

ステップ1~3:契約から入金までの流れ

売掛金の発生からファクタリング会社からの入金までの流れは、2社間と全く同じです。
手数料の金額が変わるだけですね。

【ステップ1:売掛金の発生】

借方貸方
売掛金 1,000,000円売上 1,000,000円

【ステップ2:ファクタリング契約の締結】

借方貸方
未収入金 1,000,000円売掛金 1,000,000円

【ステップ3:ファクタリング会社からの入金】

借方貸方
普通預金 970,000円未収入金 1,000,000円
売上債権譲渡損 30,000円

2社間との決定的な違い:売掛金の回収プロセス

ここが2社間と3社間の大きな違いです。
3社間ファクタリングでは、売掛先は「債権がファクタリング会社に譲渡された」ことを承諾しているため、支払期日になると、売掛先からファクタリング会社へ直接支払いが行われます。

そのため、あなたの会社は売掛金の回収と送金に関与する必要がありません。
つまり、2社間ファクタリングのステップ4と5の仕訳は不要ということです。
経理処理がシンプルになるのは、3社間ファクタリングの隠れたメリットと言えるでしょう。

ファクタリング会計処理の気になる疑問Q&A

最後に、経営者の皆様からよくいただく質問について、Q&A形式でお答えします。

Q1. ファクタリング手数料に消費税はかかりますか?

A1. いいえ、かかりません。

ファクタリングは、売掛債権という「金銭債権」の譲渡にあたります。
金銭債権の譲渡は、土地の譲渡や有価証券の譲渡などと同じく、消費税法上「非課税取引」と定められています。
したがって、ファクタリング会社に支払う手数料に消費税は課されず、仕訳の際に消費税を考慮する必要はありません。

ただし、債権譲渡登記にかかる司法書士報酬など、一部の付随費用には消費税がかかる場合がありますのでご注意ください。

Q2. 手数料の勘定科目は「支払手数料」ではダメですか?

A2. 会計処理の一貫性があれば問題ありませんが、「売上債権譲渡損」がより適切です。

「支払手数料」は、販売手数料や振込手数料など、営業活動に伴って発生する費用に使われるのが一般的です。
一方、ファクタリング手数料は金融取引に近い性質を持つため、営業外費用である「売上債権譲渡損」で処理する方が、会社の財務状況をより正確に表すことができます。

ただし、会社の経理ルールや使用している会計ソフトの仕様で「売上債権譲渡損」が使えない場合は、「支払手数料」や「雑損失」で処理しても税務上は問題ありません。
大切なのは、一度決めた勘定科目を継続して使用し、処理に一貫性を持たせることです。

Q3. 契約と入金が同日だった場合の仕訳は?

A3. 「未収入金」を省略して、直接仕訳することができます。

いわゆる「即日ファクタリング」などで契約と入金が同日に行われた場合、わざわざ「未収入金」を計上する必要はありません。
その場合は、以下のように1つの仕訳にまとめることができ、処理がより簡単になります。

借方貸方
普通預金 900,000円売掛金 1,000,000円
売上債権譲渡損 100,000円

Q4. ファクタリングは決算書にどう影響しますか?

A4. 負債を増やさずに資産をスリム化し、財務指標が改善する可能性があります。

ファクタリングは借入ではないため、貸借対照表の「負債の部」は増えません。
むしろ、資産である「売掛金」が減少し、同じく資産である「現金預金」が増えるため、資産構成がスリムになります。 これを「オフバランス化」と呼びます。

これにより、以下のような財務指標が改善する効果が期待できます。

  • 総資産利益率(ROA)の改善: 総資産が圧縮されることで、利益率が向上して見えます。
  • 自己資本比率の改善: 負債が増えずに総資産が減少するため、相対的に自己資本比率が高まります。

銀行は融資審査の際にこれらの指標を重視します。
つまり、適切にファクタリングを活用することは、将来の銀行融資に向けた財務体質の改善にも繋がる可能性があるのです。

まとめ:正しい会計処理でファクタリングを健全な資金繰りに

今回は、ファクタリング利用後の会計処理と仕訳方法について解説しました。
最後に、重要なポイントを振り返りましょう。

  • 基本の勘定科目: 「売掛金」「売上債権譲渡損」「未収入金」の3つを理解する。
  • 2社間と3社間の違い: 2社間は「売掛金の回収・送金」のプロセスが加わる。3社間は経理処理がシンプル。
  • 手数料は非課税: ファクタリングは金銭債権の譲渡なので、手数料に消費税はかからない。
  • 決算書への影響: 負債を増やさず、財務指標を改善させる効果(オフバランス化)が期待できる。

ファクタリングは、急な資金ニーズに応えてくれる非常に有効な手段です。
しかし、その後の会計処理を正しく行わなければ、会社の財務状況を正確に把握できなくなってしまいます。

もし、この記事を読んでもご自身のケースでの処理に不安が残る場合は、決して一人で抱え込まず、顧問税理士や我々のような資金繰りの専門家にご相談ください。
正しい知識を身につけ、ファクタリングをあなたの会社の力強い味方にしていきましょう。